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卒業設計作品集

九州をホームグラウンドとする大会である。全国の学生の優秀作選定に加え、JIA九州代表卒業設計作品の専攻を兼ねているため九州エリアからの応募が半数を占める。

Design Review 2009 in Fukuoka

【学生たちの力作が伊東建築を埋め尽くす】
 14回目を迎えたDesign Reviewは、開催地を昨年の北九州から福岡に移して行なわれた。会場となったのはアイランドシティ中央公園にある「ぐりんぐりん」。今年のクリティークでもある伊東豊雄氏の設計だ。会場の面積上の制約もあって応募登録が先着150名に制限され、登録開始から数日でキャンセル待ちという盛況ぶりであった。
 当日朝、楕円形プランをした会場の中央を講評会用スペースとして残し、決められた位置に出展者自ら作品を展示した。大きな段ボール箱に入れて持ち込まれた模型が次々と姿を現し、通路がどんどん狭められていった。

【トーナメント戦復活】
 1次審査は、出展者が模型・パネルを前にしてクリティークにプレゼンテーション(以下、プレゼン)するポスターセッション。クリティークと一般来場者は気になった作品に投票する。クリティーク票が入った作品を対象に公開審査を行ない、2次審査進出12作品とJIA九州学生卒業設計選奨作品7点を決定した。ここまでで1日目終了。
 2日目の朝は冷たい雨になった。2次審査は2作品ずつ対戦するトーナメント戦。これは一昨年までの方式で、「議論を活発にするためにもう一度元に戻した」(長谷川伸・学生実行委員長)。対戦者は模型とパワーポイントを使って各自3分間のプレゼンを行なう。その後、クリティークが出展者に質問したり、クリティーク同士で意見を戦わせながら勝者を決定した。

【建築を強くする「建築のリアリティ」】
 一見無関係な作品がバトルを繰り広げるトーナメント戦は、結果として「建築とは何か?」を浮かび上がらせることになった。2回戦を勝ち抜いた3案は、市街地を走る活断層(長郷まどか案)、郊外住宅地に隣接して出現した工業跡地(湊景亮案)、公園の自然と市街地が接するところ(潮田容子案)にそれぞれ独自の環境をつくり出した。「建築に今一番問われているのはどういう環境をつくっていくかということ」(伊東)。建築が必要とされている場をつかみ出し、建築的解決を示す、それが建築のリアリティだ。その一方で、「擬音語・擬態語から発想する建築」(渕上貴代案)や「形容詞によって表現される建築スタディ」(長野浩士ほか案)も評価された。「1つの建物はその周辺との関係だけでなく、これまでにつくられたすべての建築と関係を持っていい」と土居義岳氏。


Photos by the organizer.
Photos except as noted by Hiroshi Kobayashi/Spiral.

【学生コンペは可能性が決め手】
 決勝戦。長郷案は「バイタリティがある」(坂口)、湊案は「いろいろな問題を果敢に解こうとしている」(永山)など高い評価を得た。しかし、票を集めたのは潮田案だった。「デザイン的には他の2案のほうがパワフルだが、潮田案の冷静な社会性を評価したい」(伊東)。「強烈さはないが、噛めば噛むほど味わい深い作品。学生コンペは将来の『伸びしろ』で決める」(土居)。2日間かけて行なわれるDesignReviewは、模型を含めたプレゼン、クリティークとの会話や講評などプロセスが貴重。卒業設計のテーマを決める前の学生たちにこそ参加してほしい場だ。必ず「拾い物」があるはず。

【取材者コメント】
「トーナメント戦の審査ははじめてだが、おもしろかった」とクリティークの佐藤淳氏。最終出展数が124点と昨年に比べて抑えられたことで、クリティークと会話するチャンスが増えた。デザインレビューの歴史を感じさせる出来事もあった。かつてデザインレビューに参加した学生の中からクリティークが誕生したのだ。2001年の第6回学生デザインレビューで発表した坂口舞氏。「厳しい講評もあったけれど、それが身になった」(坂口)。今回、参加学生と近い世代からも講評に加わってほしい、という学生実行委員会の強い要望でクリティークの一人に選ばれた。「みんなで議論をしよう」と始まった学生デザインレビューは、毎年新しい学生を迎えながらその精神は受け継がれてしっかりと根を張り、花も咲くようになった。
[取材・文=小田道子]

アイランドシティ中央公園 ぐりんぐりん

2009年3月21日[土]-22日[日]

デザインレビュー2009/福岡実行委員会(構成大学:九州大学、佐賀大学、九州産業大学、福岡大学)、日本建築家協会九州支部

福岡デザイン倶楽部、西鉄グリーン株式会社

伊東豊雄[建築家]
坂口舞[建築家]
佐藤淳[建築家]
土居義岳[建築史家・九州大学教授]
永山祐子[建築家]
ヨコミゾマコト[建築家]

大学・大学院・短大・高専等に所属し、建築・都市・ランドスケープに関して勉強する学生。1人1作品(共同制作可)。出展者が著作権を有するオリジナルな提案であれば、卒業制作、設計課題、設計コンペ応募作等いずれも可。

123組(主催ホームページより事前登録、先着150組)。

2,000円

3/21
出展者が展示作品の前でクリティークに直接プレゼンテーションする1次審査(ポスターセッション)の後、公開審査により2次審査進出12作品およびJIA九州学生卒業設計選奨作品7作品を選定。

3/22
2次審査進出者2作品ずつのプレゼンテーションと講評によるトーナメント戦。1回戦6本、2回戦3本の後、3作品による決勝戦が行なわれ、各賞が決定。同時に、九州にある大学高専の卒業設計作品のみを対象に、JIA全国卒業設計コンクールの九州支部代表作品を選定。

【最優秀賞】
『際の建築』潮田容子(慶應義塾大学)
【優秀賞】
『活断層の上で暮らす私達』長郷まどか(九州大学)
『郊外ニューロン』湊景亮(明治大学大学院)

クリティーク賞
【伊東豊雄賞】
『ヴァーティカル道頓堀町』稲田真一(神戸芸術工科大学)
【ヨコミゾマコト賞】
『いなみ野フットパス----ため池と流のみち』福本遼(明石工業高等専門学校)
【佐藤淳賞】
『呼吸する建築』川上真誠(関西大学)
【坂口舞賞】
『いくつもの屋根の下で』大場奈帆子(九州大学)
【永山祐子賞】
『でっかいマドとながいドマ』鈴木健史(名古屋工業大学)
【土居義岳賞】
『いろは系 形容詞+建築』長野浩士+藤貴美子+下妻泰久+坪坂千明+佐野明日美+中村美砂(麻生工科デザイン専門学校)

【JIA九州学生卒業設計選奨作品】
『Bambooo』森稔(九州大学)
『オノマトペセンセーション』渕上貴代(九州大学)
『活断層の上で暮らす私達』長郷まどか(九州大学)
『アンサンブル Ensemble』青木仁敬(九州大学)
『あいだのあいだ』中川聡一郎(九州大学)
『開放された百貨店』柴田りつ(九州大学)
『いろは系 形容詞+建築』長野浩士+藤貴美子+下妻泰久+坪坂千明+佐野明日美+中村美砂(麻生工科デザイン専門学校)