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卒業設計作品集

「アーキニアリング・デザイン展 IN京都」のイベントとして、2009年度よりスタート。 学部3回生までの学生が、所属する大学で取り組んだ課題設計作品を対象に、新人賞を競い合うコンテスト。

【建築系新人王決定戦】
運動会日和の秋晴れが気持ちいい京都工芸繊維大学。
キャンパス内の美術工芸資料館にて開催中の「日本建築学会アーキニアリング・デザイン展 IN 京都」展示の一角に、建築新人戦2009の一次審査通過作品が並ぶ。
同展の独自企画として催された建築新人戦のプログラムはユニークである。応募資格が建築系の大学3回生までの個人に限られること。そして応募できる作品は各人の所属する大学での設計課題しか認められない。各大学のカラーが否応なしに出る個人戦となっている。
審査員には、竹山聖氏(京都大学准教授)、遠藤秀平氏(神戸大学教授)、陶器浩一氏(滋賀県立大学教授)、長坂大氏(京都工芸繊維大学教授)と関西圏のプロフェッサーアーキテクトが名を連ねる。

【建築新人戦の評価軸-審査実況】
立ち見が出るほどの盛況ぶり。
全国津津浦浦、北は北海道工業大学、南というか西は神戸芸術工科大学まで、一次審査を突破した総勢16名のファイナリストが前に並び、新人王を決める舞台が幕を開ける。
発表形式は1人の持ち時間が3分で、その後3分間の質疑が行われる。北から南に、台風の進路とは逆の順番で16名が一気に発表する。

休憩を挟み、午後から本格的に審査講評が始まる。ゲストとして建築系ラジオでおなじみの五十嵐太郎氏と山田幸司氏がコメントを寄せた。1回目の投票が終わり、審査員がその理由に言及。
「アイディアはいいけど未完成なもの。もしくは、見たことがあるけど洗練されているもの」(長坂氏)
「身体から発達しているもの。自分の言葉で自分の空間を表しているもの」(陶器氏)
「思い入れの感じられるもの」(遠藤氏)
「票が入っているもの以外でいいと思うもの」(竹山氏)
各審査員の選出理由を基に、入賞候補として7作品が絞り込まれた。

その後、建築新人戦として何を評価するのかを議論の上、再投票。
投票を待つ間、城戸崎和佐氏(京都工芸繊維大学准教授)が「男性は女性に弱い(甘い)気がする。デレデレじゃないですか」とチクリ。会場の笑いを誘ったこの一言が波紋を投じることとなる。2回目の投票で、竹山氏が「城戸崎さんの挑戦を受けて立つ」と持ち票すべてを女子学生の作品に投じ、結果的に票が分散し審査は混迷を極めた。
発表のときから完成度の高さを評価されていた田村案「小学校+商店街」と、鈴木案「滲む境界線」。小学校と商業施設の複合プログラムをもつ両作品が票の少なさから入賞できない状況が問題視された。
「完成度の高さは評価すべき」との長坂氏の発言を受けて、この2つから入賞作品を選ぶことになり、拮抗していた評価は竹山審査委員長の後押しで田村案が残る。
同じく自由な空間の発露・建築的な初心が現れている点で共通性のある、植松案「触+こども+アート」と今野案「thin layer -耳で感じる場-」の2つも入賞をめぐって争うこととなり、植松案に軍配が上がる。

最優秀新人賞の作品はそのまま今後の建築新人戦の方向性を決定付ける。
新人王として相応しいのは自由度か完成度か――。
混迷を極めた後、司会を務めた槻橋修氏(神戸大学准教授)の名司会ぶりも手伝って、長かった議論は収束していく。
『完成度はともあれ、空間の新しいアイディアが光る作品こそ建築新人戦に相応しい』という結論に達し、植松案が最優秀新人賞に決まった。

【建築的初心表明-竹山聖審査委員長の言葉】
どこかピリピリした雰囲気のある卒業設計(展覧会・コンテスト)ではなく、ずっと気楽な楽しい新人戦にしたい。関西で面白いイベントを立ち上げて、関西の活性化を図りたい。3回生くらいまではのびのびと、ちょっと夢を見るように、まず建築を好きになってほしい。その意味でも信州大の植松さんの素朴な魅力をもつ作品が最優秀賞を獲ったことは、本当によかった。今後の建築新人戦の参加者にもいい影響がある。

【また建築を好きになった―受賞者の声】
すごく嬉しいというのが素直な感想です。
伝えたいと思ったことが、審査員に伝わった。また建築を好きになりました。(信州大学・植松さん)

運がよかったとは思うけど、やっぱり最優秀を獲れなかったのは悔しい。
このイベントに参加してよかった。今後、もっと盛り上がるといいと思う。(京都大学・宮田さん)

入賞という結果には驚きました。周りの人に「ありがとうございます」と言いたい。(京都大学・常光さん)

【空間の力-記念シンポジウム】
建築新人戦の直後、「日本建築学会アーキニアリングデザイン展 IN 京都」の記念シンポジウムとして内藤廣氏×斉藤公男氏の講演も同会場で行われた。
「構造は建築的な価値の中心にある」と口火を切った内藤氏は、構造をどう捉え、どう扱ったか各作品毎のスライドを交え展開。斉藤氏はアーキニアリング・デザインという言葉の語源、同展覧会の意義や代々木体育館・坪井チームに参加されたときのエピソードなど構造デザインに関して話す。
シンポジウムの後半は、建築が社会に対してどうコミットしていくかという議題に重点が置かれた。
両氏とも穏やかな語り口ながら、発せられる言葉は力強く、若者に向けてのメッセージ性をひしひしと感じ取ることができたシンポジウムであった。

【取材者コメント】
卒業設計日本一決定戦、Design Review、Diploma×KYOTO、赤レンガ卒業設計展、トウキョウ建築コレクション、etc…。建築系学生イベント花盛りの昨今、またひとつ新しい試みが始まった。
先述のとおり建築新人戦のプログラムは実にユニークである。学部3回生以下、学校の設計課題しか出せない個人戦。縛りがきつい。だからこそ面白い。来年や再来年にこのイベントのファイナリストが各地の卒業設計コンテストで大暴れすることも十分に考えられる。その意味でプレ卒業設計日本一決定戦と位置づけることができるかもしれない。
また、先に挙げたイベントのほとんどが3月開催であるのに対して、建築新人戦は秋開催である。本当に建築系イベントのニッチを見事に押さえている。
今回は圧倒的な完成度を誇る早稲田、しれっと強い京大が印象に残った。
次回は植松案のような自由闊達なアイディアがまた勝つのか、それとも他を寄せ付けないほど完成度の高い作品が力づくで持っていくのか、注目したい。
また、新人王を目指して全国の3回生が一堂に集まるような活気のあるイベントに育つことを期待したい。



(取材・文=守行良晃)

■最優秀賞
『触+こども+アート』 植松千明(信州大学)

■優秀賞
『小学校+商店街』 田村正(早稲田大学)
『瀬戸の小学校』 常光郁江(京都大学)
『Evgen』 宮田祐次(京都大学)

2009年10月10日(土)

京都工芸繊維大学 3号館 0311講義室
  (京都府京都市左京区松ヶ崎橋上町)

■委員長
竹山 聖 (京都大学大学院准教授)

■委員
遠藤秀平 (神戸大学大学院教授)
陶器浩一 (滋賀県立大学教授)
長坂 大  (京都工芸繊維大学教授)

日本建築学会 アーキニアリング・デザイン展 IN 京都 実行委員会 委員長 松隈洋
建築新人戦実行委員会 委員長 竹山聖